停電+断水同時発生に備える|家庭内運用ルール作成ガイド

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防災
  1. 要点先取り:電気と水が同時に止まったら“優先順位・配分・衛生動線”で生き残る
  2. 1.発災0~6時間:初動の定形化|安全・情報・資源確保
    1. 1-1.安全確認と遮断(電気・火・ガス・水)
    2. 1-2.情報の取得と共有(通信の節電運用)
    3. 1-3.資源の初期配分(今日と明日の線引き)
    4. 1-4.家族内ロール(役割)の即時決定
  3. 2.電力の使い方を“見える化”|優先順位・配分・代替手段
    1. 2-1.電力優先順位(家庭の合言葉)
    2. 2-2.デバイス別の配分と連続運用時間(目安)
    3. 2-3.停電モードの端末設定(節電チューニング)
    4. 2-4.発電・蓄電の構成(最小→拡張)
    5. 2-5.停電モード家電の運用表(再掲+補足)
  4. 3.水の使い方を“数字で合意”|飲用・生活・衛生の三分法
    1. 3-1.1日の配分(成人の目安)
    2. 3-2.家族属性別の補正(追加配慮)
    3. 3-3.断水時の“水源ミックス”
    4. 3-4.配水表(家族用テンプレ)
    5. 3-5.やってはいけない水の取り扱い
  5. 4.食・衛生・トイレの“逆流しない動線”|一方通行で清潔を守る
    1. 4-1.調理と食事(火は小さく・水は少なく)
    2. 4-2.衛生(手・口・体)
    3. 4-3.トイレ(ニオイ・漏れ対策)
    4. 4-4.動線の設計(汚れ→清潔の一方通行)
    5. 4-5.ペット・アレルギー・薬の配慮
  6. 5.72時間の運用スケジュール|再評価・休息・近隣連携
    1. 5-1.タイムライン(例)
    2. 5-2.近隣連携の基本
    3. 5-3.休息とメンタル(光・音・睡眠)
  7. 付録A:家の配置・備蓄・点検のテンプレ
    1. A-1.“停電+断水モード”配置図(要約)
    2. A-2.備蓄リスト(最小構成→拡張)
    3. A-3.点検カレンダー(毎月第1日曜)
    4. A-4.月15分のシミュレーション訓練(テンプレ)
  8. Q&A(よくある疑問を一気に解決)
  9. 用語辞典(やさしい言い換え)

要点先取り:電気と水が同時に止まったら“優先順位・配分・衛生動線”で生き残る

停電と断水が同時に起きると、冷蔵・調理・通信・トイレ・手洗いのすべてが止まる。 混乱を避ける鍵は、(1)命に直結する順の優先順位(体温>水>衛生>食>情報)、(2)電力と水の配分ルール(数字で合意)、(3)汚れがきれい側へ逆流しない衛生動線(一方通行)を事前に紙で決めておくこと。この記事は家族会議でそのまま使える運用シートとして作成し、役割分担カード/配分表/点検カレンダーまで一体で運用できるよう設計した。

まず3つだけ実行:①LEDランタンを各部屋に常設、②配分表を冷蔵庫に貼る、③**月1の訓練(15分)**を決める。これで初動の7割は整う。


1.発災0~6時間:初動の定形化|安全・情報・資源確保

1-1.安全確認と遮断(電気・火・ガス・水)

  • ブレーカー:場所と落とし方を家族で共有。感電・漏電を避ける。
  • 火気ろうそく原則禁止LED一択カセットコンロ換気→着火→調理→消火の順を声出しで確認。
  • ガス・水道漏れ・破損・異臭があれば。異常がなければむやみに閉め切らない(復旧工程に影響する場合がある)。
  • 家内安全倒れ物・ガラス片靴・手袋で処理し、出入口・階段を確保。

1-2.情報の取得と共有(通信の節電運用)

  • 電池ラジオ/手回しラジオ広域情報を先に取得。スマホは追認に回す。
  • スマホは15分ごとにまとめて起動機内→オン→連絡→機内)。家族連絡は定刻送信へ切替。
  • 集合地点・次回連絡時刻耐水メモに記し、紙連絡表を全員のポケットへ。

1-3.資源の初期配分(今日と明日の線引き)

  • 飲料水:**1人500mlを“今日の先取り”**として確保。残りは翌日以降へ温存。
  • 冷蔵庫開閉禁止保冷剤・凍ペットで庫内温度を延命。
  • 電力モバイルバッテリーは残量下位の端末から順に充電。昼間に車でまとめ充電を計画。

1-4.家族内ロール(役割)の即時決定

役割仕事引き継ぎタイミング
司令(親)優先順位の決定、配分表の承認6時間ごと交代
水番給水・配水・トイレ凝固剤の管理各食後に報告
電力番充電・ライト管理・通電時間の記録就寝前に報告
衛生番手指衛生・動線の清掃・ごみ管理トイレ使用の都度

やってはいけない初動:不安で家電を試しに入切頻回の冷蔵庫開閉ろうそく点灯。どれも寿命を削る。


2.電力の使い方を“見える化”|優先順位・配分・代替手段

2-1.電力優先順位(家庭の合言葉)

照明>通信>冷蔵>その他。命と連絡に直結するものを常に先へ。調理はガス(カセット)へ退避が基本。

2-2.デバイス別の配分と連続運用時間(目安)

用途優先度消費の目安配分ルール代替
LEDランタン5Wh/h部屋ごと1台/就寝前後のみ点灯反射板で増光
スマホ10〜20Wh/満充電連絡時のみ起動/昼間充電家族1台に集約
ルーター5〜10Wh/h30分/回線確認時のみ通電ラジオ優先
冷蔵庫50〜100Wh/h開閉最小/保冷剤併用クーラーボックス
調理機器高負荷原則不使用カセットコンロ

ポイントろうそく原則禁止(延焼・酸欠)。LED+反射で十分明るい。

2-3.停電モードの端末設定(節電チューニング)

  • スマホ機内・低電力・画面最小・通知限定。写真・動画の送受信を夜間に一括
  • LED天井反射(やわらかい光)+足元灯(転倒防止)の二灯
  • モバイル電源20〜80%の範囲で回すと劣化が抑えられる

2-4.発電・蓄電の構成(最小→拡張)

レベル構成できること注意
最小500Wh電源+ソーラー100W通信・照明の長期維持雨天は発電低下
標準1,000Wh電源+200W冷蔵庫の間欠運転ケーブル発熱に注意
拡張車中インバータ併用昼間に集中充電車庫内アイドリング不可(換気)

2-5.停電モード家電の運用表(再掲+補足)

家電使い方やめること備考
冷蔵庫開閉最小、保冷剤・凍ペット併用扉の頻回開閉庫内に温度計を吊る
洗濯機原則停止連続運転復電後は槽洗浄
電子レンジ原則停止解凍・加熱調理はカセットへ
トイレ温水洗浄停止通電のまま清掃はウェットに切替
掃除機手動へ長時間運転ほうき+チリトリに置換

3.水の使い方を“数字で合意”|飲用・生活・衛生の三分法

3-1.1日の配分(成人の目安)

用途目安/人/日備考
飲用1.0〜1.5L気温・活動で変動、カフェイン飲料は換算外推奨
調理・食品0.5Lインスタント・乾物の戻し含む
衛生(手洗い・口腔・簡易洗浄)0.5Lウェット・アルコール併用で削減

合計2.0〜2.5L/人/日3日分=6〜7.5L/人を最低ラインに。

3-2.家族属性別の補正(追加配慮)

区分目安/日備考
乳幼児1.0〜1.5Lミルク用の煮沸・調乳を考慮
妊娠・授乳2.0L前後便秘・脱水予防を優先
高齢1.5L目標少量高頻度で摂取
発熱時+0.5〜1.0L経口補水液を優先

3-3.断水時の“水源ミックス”

  • 飲用ペット水/スーパー給水/浄水タブレット
  • 生活風呂の残り湯/雨水(ろ過)/給水車。※飲用不可を明示。
  • 非常用トイレ凝固剤1回1包バケツ+二重袋運用で臭気と漏れを抑える。

3-4.配水表(家族用テンプレ)

飲用(L)調理(L)衛生(L)合計(L)
A
B
C

ルール朝の段階で“その日分”を各自ボトルに分配見える化で争いを防ぐ。

3-5.やってはいけない水の取り扱い

  • 不明な容器の再利用(薬品容器など)は厳禁
  • 雨水の直接飲用は禁止。必ずろ過・煮沸・薬剤のいずれかを併用。
  • トイレ洗浄に飲料水を使わない(簡易トイレを使う)。

4.食・衛生・トイレの“逆流しない動線”|一方通行で清潔を守る

4-1.調理と食事(火は小さく・水は少なく)

  • 主力はカセットコンロ通気・耐熱ボード・一酸化炭素警戒を守る。
  • 一鍋化米→雑炊/パスタ→スープ水・洗い物を削減。
  • 使い捨て皿+耐熱ビニール洗浄水ゼロを実現。
  • 優先消費リスト生鮮→冷蔵→乾物→缶の順。痛みやすい物から先に

4-2.衛生(手・口・体)

  • 流水→なければウエット→アルコールの順。爪は短く。
  • 少量水うがい→ガーグル用紙コップ使い回し禁止
  • 濡れタオル拭き→部分おしぼり乾いた肌着へ交換おむつ・生理用品日数分+1日の余力。

4-3.トイレ(ニオイ・漏れ対策)

  • 二重袋+凝固剤大は2包を目安。
  • 便座前に吸水マットで滴り防止。汚物袋は結び目二重
  • 密閉ごみ箱ベランダ側に一時保管。直射日光は避ける

4-4.動線の設計(汚れ→清潔の一方通行)

場所役割置く物置かない物
玄関汚れの受け皿長靴・雨具・汚れ箱食料・清潔用品
キッチン調理・配給コンロ・鍋・使い捨て皿汚れ物・工具
洗面所手・口・体水・ウエット・タオルゴミ袋満杯品

4-5.ペット・アレルギー・薬の配慮

  • ペット飲水・トイレ砂3日分確保。人の水と混ぜない
  • アレルギー成分表示を紙で控える。配給食受取り時の確認メモを用意。
  • 1日分ケースに小分け。お薬手帳の写し防水袋へ。

5.72時間の運用スケジュール|再評価・休息・近隣連携

5-1.タイムライン(例)

時間帯やること具体動作
0〜6h初動遮断・通路確保・情報取得・電水配分表作成
6〜24h生活維持一鍋化、冷蔵開閉最小、排せつは二重袋
24〜48h体力維持睡眠確保、体拭き、栄養バランス補正
48〜72h見直し電力と水の残量再計算、近隣と物々交換・給水情報共有

5-2.近隣連携の基本

  • 物資の重複(カセット・電池サイズ)を交換して効率化。
  • 情報掲示板玄関外に作り、不在時でも伝言が残るように。
  • 要配慮者(高齢・乳幼児・障がい)の見守り当番を決める。

5-3.休息とメンタル(光・音・睡眠)

  • 二灯照明(天井反射+足元)で不安を軽減。耳栓・アイマスクを配布。
  • 家族の役割を交代し、**1日1回30分の“何もしない時間”**を確保。
  • 子どもには役割カード(ライト番・水番)で参加意識を高める。

付録A:家の配置・備蓄・点検のテンプレ

A-1.“停電+断水モード”配置図(要約)

  • 玄関:泥汚れ受けスペース、長靴、雨具、ゴミ袋、吸水マット。
  • リビング:LEDランタン、反射テープ、家族掲示板、モバイル電源。
  • キッチン:カセットコンロ、ボンベ、鍋、使い捨て皿・箸、保冷剤、耐熱ボード。
  • 洗面所:水・ウエット・アルコール、簡易トイレ一式、手袋、除菌剤。
  • 寝室:ブランケット、アルミシート、耳栓・アイマスク、足元灯。

A-2.備蓄リスト(最小構成→拡張)

品目最小構成拡張備考
飲料水2.5L/人/日×3日7日分期限をボトルに記入
簡易トイレ1人×5回/日×3日7日分凝固剤・二重袋
ランタン1部屋1台予備1乾電池は単一→単三変換でも可
モバイル電源500Wh1,000Whソーラー100W併設で安心
ボンベ3本/家庭/週6本火気と換気の両立
保冷剤冷凍庫満たす量追加保冷バッグ保冷剤リレーに活用
ウエット・アルコール1家族1パック/週2〜3パック手・口・体の順で使用

A-3.点検カレンダー(毎月第1日曜)

  • LED点灯モバイル電源残量ボンベ本数トイレ在庫保冷剤凍結を確認。
  • 配分表テンプレ新しい月の紙に差し替える。

A-4.月15分のシミュレーション訓練(テンプレ)

1)照明OFF→LEDへ切替え。
2)スマホ機内→定刻連絡で家族に“訓練”送信。
3)配分表その日の数値を記入。
4)カセット点火→湯沸し→消火を声出しで実演。
5)簡易トイレ袋装着→外しまでを練習。
6)気づき掲示板にメモ。


Q&A(よくある疑問を一気に解決)

Q1.冷蔵庫はどれくらい保つ?
A.開閉最小+保冷剤数時間〜半日が目安。先に痛みやすい食材から消費する。

Q2.水が足りない。何を削ればいい?
A.洗い物ゼロ化(一鍋・使い捨て皿)と体拭きの部分化で削減。飲用は削らない

Q3.カセットコンロは室内で安全?
A.換気・耐熱ボード・可燃物1m離隔を守れば使える。ニオイ・頭痛を感じたら即停止し換気。

Q4.スマホの電池が心許ない。
A.機内モード+必要時のみオン家族1台に集約昼間に車で充電が効く。

Q5.簡易トイレの捨て方は?
A.自治体の非常時ルールに従う。密閉・表示を徹底し、屋外日陰で一時保管。

Q6.マンションで断水。タンクから抜ける?
A.機器の破損・衛生リスクがあるため独断での排水・分解は不可給水所や配水を待つ

Q7.発電機を室内で使ってもよい?
A.不可一酸化炭素中毒の危険。屋外・風下・離隔が必須。

Q8.乳幼児のミルクはどう作る?
A.飲用水を優先し、清潔な鍋で一度沸騰→適温調乳後はすぐ飲む

Q9.配給食にアレルギー表示がない。
A.疑わしい物は口にしない成分を紙で照合し、代替の持参品を優先。

Q10.夜が怖くて眠れない。
A.天井反射+足元灯二灯にし、見回り役を決める。耳栓・アイマスクも有効。


用語辞典(やさしい言い換え)

  • 配分表1日で誰がどれだけ使うかの紙。口論を減らす道具。
  • 二灯照明天井を照らす灯り+足元灯。安心して動ける。
  • 一鍋化料理を一つの鍋で完結水・燃料・洗い物が少ない。
  • 逆流しない動線汚れ→きれい一方通行。感染や匂いを広げない。
  • 保冷剤リレー冷凍→冷蔵→クーラー順に使い回すこと。
  • 配分ミーティング朝に必要量を決める家族会議。数字で合意する時間。
  • 役割カード水番・電力番などの担当札。交代を可視化する。

まとめ
停電と断水が同時でも、優先順位(体温>水>衛生>食>情報)電力・水の配分逆流しない衛生動線3セット紙で固定すれば慌てない。今日、LEDランタン常設・配分表印刷・月15分訓練を決め、ボンベ・簡易トイレ・保冷剤の在庫を点検。第1日曜の点検カレンダーを家族で回せば、次の72時間は、もう設計済みだ。

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