紙のツールで情報掲示を回す|メモ・名札・張り紙ガイド

スポンサーリンク
防災

停電・通信障害・混雑時でも“伝わる情報”は紙で回せる。 本稿は、メモ・名札・張り紙という最小の紙ツールを使い、家庭・職場・避難所で混乱なく情報を共有するための実務ガイドです。

用紙・筆記具・色使い・掲示位置・回収の流れに加え、版管理・可読距離・雨風対策・読み上げの型・個人情報の扱いまで踏み込み、だれが読んでもすぐに動ける手順と表でまとめました。運用の型・見本文・点検表・ケーススタディをまとめました。


  1. 1.全体設計:紙の情報を“回す”ための基本
    1. 1-1.紙の強みと弱みを理解する(解決策までセット)
    2. 1-2.役割・ルート・締切を先に決める(流れを固定)
    3. 1-3.用紙・筆記具・保護材の選び方(早見表)
    4. 1-4.情報の優先順位マトリクス(何を先に掲示するか)
    5. 1-5.時間帯と更新頻度の標準(目安)
    6. 1-6.安全配慮と個人情報(掲示の限度)
  2. 2.メモ運用:一枚で動線と判断を変える
    1. 2-1.メモの書式(5行テンプレ+見本)
    2. 2-2.色と形で“優先度”を伝える(帯・矢印・角折り)
    3. 2-3.文体ルールと誤解削減(悪い例→良い例)
    4. 2-4.回す流れ(班長→配布→回収)と胸ポケットメモ
    5. 2-5.配布ルートと時間割(遅延を減らす)
  3. 3.名札・腕章・配布物:人と物の“見える化”
    1. 3-1.名札の三要素と見本(役割・氏名・連絡)
    2. 3-2.腕章の色分けと交代ルール(混乱を作らない)
    3. 3-3.配布物の束ね方と“最初の1枚”
    4. 3-4.貸出カード・配布控え(紛失を減らす)
  4. 4.張り紙・掲示板:人が“自然に目にする”位置に
    1. 4-1.貼る場所と高さ(到達率は場所で決まる)
    2. 4-2.固定方法の選び方(屋外強度/跡残り)
    3. 4-3.版管理と地図・矢印の描き方(1分アナウンスの型付き)
    4. 4-4.可読距離と文字の大きさ(早見表)
    5. 4-5.耐候対策の層構造(屋外掲示の長持ち術)
  5. 5.テンプレ・保管・運用ルール:回す仕組みを常備に
    1. 5-1.すぐ使える紙テンプレ(見出しと本文の型)
    2. 5-2.在庫・道具の置き場と“定数管理”
    3. 5-3.日次点検(朝夕5分)と週次棚卸し
    4. 5-4.ケーススタディ:用途別の運用例(3パターン)
    5. 5-5.トラブル→対策早見表
    6. 5-6.Q&A(よくある疑問)
    7. 5-7.用語辞典(やさしい言い換え)

1.全体設計:紙の情報を“回す”ための基本

1-1.紙の強みと弱みを理解する(解決策までセット)

  • 強み:電源・通信が不要、視界に入る、複数人で同時に読める、配布と掲示で到達率が高い証跡として保管できる。
  • 弱み:濡れ・風・破損に弱い、差し替えの手間最新版の判別が難しい。
  • 解決策:右下に日付・時刻・版数を必ず記入/上端に色帯で重要度を明示/古紙は回収箱へ集約/**読み上げ(音)+掲示(視覚)**で二重化。

版・色・場所の三点ルール
1)版管理:第○版を右下。2版以上は旧版を回収箱へ
2)色帯:上端2cmで赤=危険/黄=注意/緑=完了/青=案内
3)場所出入口・列の先頭・トイレ前の3点に同内容を掲示し、同時更新する。

1-2.役割・ルート・締切を先に決める(流れを固定)

  • 作る→掲示→読み上げ→回収→保管の順番を紙の当番表で常設。
  • 朝・昼・夜の三交代で空白を作らない。
  • 読み合わせは朝夕の2回1分アナウンスの型で実施(型は4-3)。

運用ルート図(例)
受付(作成)→玄関・給水所・トイレ前(掲示)→広場(読み上げ)→回収箱(旧版)→書庫(保管)

1-3.用紙・筆記具・保護材の選び方(早見表)

項目推奨ねらい代替
用紙A4・A3視認性と入手性B5(個人メモ)
ペン油性マーカー・鉛筆2B耐水・読みやすい太さボールペン(にじみ注意)
保護クリアファイル・OPP袋・ラミネート防滴・耐汚れ透明テープで周囲補強

コツ:屋外はA3以上+太字、屋内通路はA4+太矢印が読み取りやすい。

1-4.情報の優先順位マトリクス(何を先に掲示するか)

区分締切掲示先色帯
最優先危険箇所・避難指示即時出入口・現場前
配水・物資・医療30分前出入口・列先頭・受付
当番・清掃・点検1時間前掲示板・該当区画
お知らせ・回覧終日掲示板のみ青/緑

1-5.時間帯と更新頻度の標準(目安)

時間帯更新内容実施者備考
朝(7–9時)当番表・配給予定・危険箇所点検朝当番1分アナウンス付き
昼(12–13時)進捗・変更・注意喚起昼当番列形成の矢印を再確認
夕(17–19時)翌日の予定・回収・清掃夕当番旧版回収を徹底

1-6.安全配慮と個人情報(掲示の限度)

  • 名簿・連絡先・顔写真掲示しない(必要最小限の番号化)。
  • 針・金具は専用ボードへ。通路側はテープ固定を基本に。
  • 子どもが触れる高さでは角を丸めるカバーを併用。

2.メモ運用:一枚で動線と判断を変える

2-1.メモの書式(5行テンプレ+見本)

1)表題(一言で用件)
2)日時(○/○ ○:○)
3)場所(対象/向かう場所)
4)要点(3点まで)
5)署名(書いた人・連絡先)

見本:「配水車 本日16:30 北門/並び開始16:10/容器20Lまで/担当:総務・田中」

字と配置のコツ

  • 表題は1.5行分の大字、要点は短文+動詞、数字は全角で揃える
  • 余白を上下に1〜2cm残すと遠目で読みやすい。

2-2.色と形で“優先度”を伝える(帯・矢印・角折り)

色帯意味使いどころ
危険・至急立入禁止・漏電注意・避難誘導
注意・準備配給列開始・車両出入り・工事告知
安心・完了点検済・配布終了・安全確認済
情報・案内地図・ルート・名簿・受付案内
  • 帯は上端2cm幅。色が無ければ斜線・網掛けで代用。
  • 進行方向は太い矢印を一本線で。至急は右上1折り、重要は右上2折りで合図。

2-3.文体ルールと誤解削減(悪い例→良い例)

目的悪い例良い例
配水案内すぐ来てください本日16:30配水/並び16:10開始/容器20Lまで
危険箇所注意してくださいこの先 立入禁止/濡れ床/右側通行
物資配布多くあります1人1個/再配布18:00予定

禁止語:「すぐ」「たぶん」「できれば」など曖昧語。数字・位置・時刻で具体化。

2-4.回す流れ(班長→配布→回収)と胸ポケットメモ

  • 班長が作成→読み上げ→配布→掲示の順で1回完結
  • 終了後は回収箱へ未回収=未実施の合図に。
  • 個人向けはA7〜B7の胸ポケットメモ(集合時刻・持ち物・担当)。ゼムクリップ+安全ピンで落下防止。

筆記具の耐候性と読みやすさ

筆記具速書き読みやすさ備考
油性マーカー強い太字で見やすい主掲示に最適
鉛筆2B細かい数値向き
ボールペンにじみに注意

2-5.配布ルートと時間割(遅延を減らす)

役割出発ルート戻り備考
班長09:00受付→出入口→給水所09:20読み上げ実施
配布係A09:05受付→トイレ前→階段09:25掲示写真を撮る
回収係17:30掲示板一巡18:00旧版回収完了

3.名札・腕章・配布物:人と物の“見える化”

3-1.名札の三要素と見本(役割・氏名・連絡)

  • 上段:役割(総務/医療/物資/警備)。
  • 中段:氏名(大字で遠目可)。
  • 下段:連絡手段(無線番号・班名)。

名札テンプレ(A6横)

記載
役割物資
氏名佐藤
連絡無線CH3/第2班

ひもは切れやすい安全ピン+ひもの二重化が安心。雨天は透明ポケットで保護。

3-2.腕章の色分けと交代ルール(混乱を作らない)

役割備考
救護医療・応急処置
誘導交通整理・列管理
安全設備点検・危険箇所巡回
情報受付・案内・記録
  • 役割交代は腕章ごと交換名札は本人固定で誤認を防ぐ。
  • 子どもボランティアは黄色ベストで識別、作業は安全範囲に限定。

3-3.配布物の束ね方と“最初の1枚”

  • 上綴じクリップで束ね、表紙に目的・配布先・配布日
  • 最初の1枚に地図を入れ、入口→列→受付→出口を一本矢印で。
  • 余りは返却箱でカウントし、翌版の部数調整に反映。

3-4.貸出カード・配布控え(紛失を減らす)

用途記入欄回収先
懐中電灯番号/氏名/時刻受付箱
無線機機番/担当/返却時刻情報係
工具セットセット名/持出人/返却印設備係

4.張り紙・掲示板:人が“自然に目にする”位置に

4-1.貼る場所と高さ(到達率は場所で決まる)

場所目線ねらい注意
玄関・出入口150〜160cm全員の入退場で必ず目に入る風・雨対策
トイレ前140cm行列中に読ませる混雑で剥がれやすい
給水所160cm並ぶ前にルール周知係員動線を確保
階段踊り場130cm上下の安全喚起手すりをふさがない

高さの基準:人の目線−10cmを目安に。子ども向けは低めに。

4-2.固定方法の選び方(屋外強度/跡残り)

固定強度屋外備考
養生テープ汎用・色が選べる
透明テープ防滴補強に良い
画鋲×屋外不可
結束バンドなしポール・柵に最適
  • 凹凸面段ボール下地+テープで貼ると剥がれにくい。
  • 屋外は上から下へ水が抜ける貼り方(上辺強固定+下辺弱固定)。

4-3.版管理と地図・矢印の描き方(1分アナウンスの型付き)

  • 右下に「第○版・○/○ ○:○」を記載。新しい紙は旧版の上に重ね張り旧版は回収箱へ。
  • 地図は太矢印一本入口→列→受付→出口。危険は赤囲み、トイレは青四角

1分アナウンス(読み合わせ)
1)表題と対象者を先に。
2)時刻→場所→持ち物の順で短く。
3)列の方向を指さし確認。
4)質問は1分だけ受ける(長話にしない)。

4-4.可読距離と文字の大きさ(早見表)

文字の高さ読める距離の目安用途
30mm約10m屋外見出し(A3)
20mm約7m屋外注意、屋内見出し
10mm約3m屋内本文(A4)
5mm約1.5m近距離の指示

太字+高コントラスト(白地に黒・黄地に黒)が基本。影や逆光を避ける。

4-5.耐候対策の層構造(屋外掲示の長持ち術)

1)紙→ 2)透明袋(OPPなど)→ 3)上辺を養生テープで強固定→ 4)四隅を補強→ 5)水抜きのため下辺は弱固定。
角は丸めると剥がれにくい。


5.テンプレ・保管・運用ルール:回す仕組みを常備に

5-1.すぐ使える紙テンプレ(見出しと本文の型)

用途見出し例本文の型
給水案内本日○時○分から配水並び位置/容器上限/順番制
物資配布○○の配布/対象:○○配布数/身分確認/再配布時刻
迷子迷子のお知らせ年齢・服装・最終目撃・連絡先
工事・点検○○工事中/立入禁止区画・時間・責任者
防犯立入禁止・警戒中連絡先/巡回時刻/範囲

5-2.在庫・道具の置き場と“定数管理”

  • 紙・ペン・テープ・クリアファイル・画鋲・結束バンド一箱にまとめて玄関脇へ。
  • 最低在庫(例:A4用紙500枚、油性マーカー黒3本、養生テープ2巻)を決める。
  • 返却箱を掲示し、旧版・余りをそこへ集め、翌日の部数調整に活かす。

5-3.日次点検(朝夕5分)と週次棚卸し

項目
掲示の更新
古紙の回収
地図・矢印の破れ補修
当番表の入替

週次棚卸し(15分):用紙・ペン・テープの残量を数え、不足は翌週分を前倒し補充

5-4.ケーススタディ:用途別の運用例(3パターン)

A.避難所の配水動線:A3で列の入口→受付→出口を一本矢印、赤囲みで危険箇所、黄帯で待ち時間を更新。読み上げは毎時00分
B.職場の工事区画:A4で立入禁止赤帯責任者名と時間を明記。段ボール下地で凹凸面に対応。
C.町内会の回覧:A4で見出し大字本文3行版数を右下。回収箱で旧版を整理。

5-5.トラブル→対策早見表

事象よくある原因先回り策
情報が古いまま残る版管理なし右下に版数/旧版回収箱を徹底
伝わらない字が小さい・場所不適可読距離表で文字サイズ再設計
はがれる四隅弱い上辺強固定+角丸+下辺水抜き
行列の向きが乱れる矢印不足太矢印一本線+人員誘導

5-6.Q&A(よくある疑問)

Q1.紙は雨に弱い。屋外掲示はどう守る?
A. クリアファイルに入れて上辺だけテープ固定で水抜けを作る。OPP袋+四辺テープも有効。

Q2.色紙やカラーマーカーがない。
A. 斜線・網掛け・角折りで代用。太字・大字で距離を稼ぐ。

Q3.更新が多くて混乱する。
A. 版数・時刻・署名を必ず記入。旧版回収箱を人の流れの途中に置く。

Q4.掲示がはがれる。
A. 養生テープで四隅+中央、屋外は結束バンドで固定。凹凸面段ボール下地を当てる。

Q5.人手が足りない。
A. 読み上げ+指差しで一斉周知→記録写真を撮り、掲示場所へ貼る。

Q6.個人情報はどう扱う?
A. 名簿・連絡先は鍵付き保管、掲示は番号化するなど必要最小限に。不要時は裁断処理

Q7.子どもにも伝わる掲示の工夫は?
A. 絵記号(トイレ=青四角・危険=赤囲み)とやさしい言い回し低い掲示位置が有効。

Q8.夜間は見えにくい。
A. 反射テープで縁取り、足元灯を近くに置く。白地に黒でコントラストを上げる。

5-7.用語辞典(やさしい言い換え)

版(版数):同じ内容の更新回数。第2版など。
色帯:紙の上端に貼る色の帯。優先度を示す。
回収箱:古い紙や余った配布物を集める箱
読み合わせ:紙を声に出して確認すること。
動線:人が移動する道筋
下地:貼る面の凹凸をならすための台紙(段ボールなど)。
可読距離文字が読める距離の目安。
養生テープはがした跡が残りにくいテープ


まとめ:紙は“場所×時間×版管理”で生きる。
紙の情報は、貼る場所・伝える時間・版の新旧が揃ったとき最大の力を発揮します。用紙・筆記具・固定法を決め、当番と回収の道筋を固定化すれば、停電や通信障害でも迷わない掲示が回ります。まずは色帯の意味・掲示場所の地図・回収箱の三点セットを整え、今日から運用を始めましょう。

タイトルとURLをコピーしました